エンタメと知財分科会で知り合った方が発起人の「Startup Weekend Tokyo Anime」に参加してきました。週末(金曜の夜から日曜の夜)の間で「アイデアのプレゼン→チーム結成→ニーズヒアリング→最終プレゼン(できればデモ入り)」まで一気に行う「Startup Weekend」(東京開催なので「Tokyo」が後ろにつく)というイベントの、アニメ関連ビジネス特化版という初の試みということで、エンタメの仕事している身として興味があったので最終プレゼンだけ参加してきました。
「好きなキャラの声で課金する」ビジネスモデル
全部で9個のプレゼンが行われ、優勝したのが「電話相手の声をアニメ声に変えるアプリ」でした。利用想定ケースとしてプレゼンしていたのは「休日に上司から仕事の連絡が入り、気が乗らないまま応対している」というシチュエーションで、電話の声をアニメ声の女の子にすることで、気分が明るくなり仕事にも前向きになるという内容でした。
で、個人的に面白いなと思ったのはそのビジネスモデル。ざっくり言うと「標準的な声が入ったアプリは無料」で「声を追加するのは有料」というモデル。例えば、「涼宮ハルヒの声」を追加するために100円(買い切りか月額かとかは置いといて)とかそういう話です。着ボイスのように「涼宮ハルヒの声での決まった台詞」ではなく、「電話相手の声を涼宮ハルヒの声に変換する機能」を提供するということです。
声優事務所と交渉するか、機械学習で似た声を創り出すか
このプレゼンを終えた後、審査員から「声はどうやって集めるのか」という質問が出ました。
1つめの選択肢としては「声優(が所属する事務所)と交渉して、公式に録音させてもらう」です。ボーカロイド(ボカロ)の初音ミクは「藤田咲」という声優が声を提供していますし、最近だと小林幸子が声を提供した「Sachiko」というボカロもあります。また、声優の声を使ったアプリ開発を行う「声優ハッカソン」なども開催されています。
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で、彼らが2つめの選択肢として挙げたのが「テレビやネットで公開されているアニメのセリフを聞かせて機械学習させる」というもの。電気通信大学(電通大)の中鹿亘助教が自分の声を他人の声に変換できる技術を開発したと発表があったばかりのホットなトピックでした。
電気通信大学の中鹿亘助教は自分の声を簡単に他人の声そっくりに変換できる技術を開発した。最新の人工知能(AI)技術を活用した。録音などがあれば、亡くなった声優の声で新たなアニメ番組を作れるようになる。海外の映画やドラマを吹き替える際に出演している俳優の声そっくりにすることも可能だ。
参考:自分の声、他人そっくりに 電通大が変換技術開発
2つめの方法だと現役の声優はもちろん、既に引退したり亡くなられてたりする声優の声をマネすることも可能なので、いろいろ夢が広がる技術だなと思っております。
勝手にアニメキャラの声を機械学習してマネするのは著作権侵害になるか
これ、要するに「アニメ10話分の涼宮ハルヒのセリフを全て聞かせて、そのアニメ内では一度も行ったことが無いセリフを涼宮ハルヒの声で言わせるようにする」ということです。ここで気になるのが下記のような論点です。
- アニメ内のセリフを学習させる(聞かせる、音声データをコピーする)ことは著作権侵害に当たるのか
- 学習させた声を使用することは著作権侵害にあたるのか
- 学習させた声で「アニメ内の名シーンのセリフを言わせる」ことは著作権侵害にあたるのか
何か参考になりそうな判例や資料などあれば教えていただけるととても嬉しいです。
実はこの議論を画像の著作権に置き換えて行う予定なのが5/25(水)の研究会です。こちら、開催後にはどのような議論があったか、またこのブログなどでお話しできればと思っておりますので楽しみにしていただければと思います。
ディープラーニングを用いたAIで画像を扱う際の著作権侵害のリスクについて ~AIの学習・利用それぞれの観点で~