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第1回「攻殻機動隊 REALIZE PROJECTはなぜ実現した?現実とSFを繋ぐコンテンツIPの力」の振り返り・後編(山田)

広告代理店時代の事例を中心に「コンテンツIPを活用したビジネスのポイントについて」

Smips・エンタメと知財分科会第1回「攻殻機動隊 REALIZE PROJECTはなぜ実現した?現実とSFを繋ぐコンテンツIPの力」を4/16に開催しました。自分の復習を兼ねて思うところを綴ります。(客観的な内容の要約ではなく、僕が個人的に学びになったところのまとめになります)

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振り返りトピックまとめ

振り返りのポイントは下記2点。

  • 攻殻機動隊の話を中心にした「技術とSF、技術とエンタメの関係性について」
  • 広告代理店時代の事例を中心に「コンテンツIPを活用したビジネスのポイントについて」

で、今回の記事は2つ目の話です。1つ目の話に関しては、前回の記事をご覧ください。

体験型レジャーに組み込まれていくエンタメ作品

マンガ作品が遊園地などの体験型レジャースポットとコラボすることが増えてきました。下記はUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)とジャンプのコラボ。あと、リアル脱出ゲームも進撃の巨人とか、名探偵コナンとコラボしてたりします。

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エンタメ作品の体験展示は、キャラクター使用料+パテント使用料の2つの収入を生み出す可能性がある

例えば攻殻機動隊の世界を体験するレジャー施設を作る際に、「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」(ハッカソン等)で生み出した技術を使う、そしてその技術がしっかりと特許として権利化されていた場合には、パテント使用料を受け取る選択肢が出てきます。技術発掘から知財化までリアライズプロジェクトとして関わっておくことで、このパテント使用料を収入源として計算できるようになってきます。キャラクター使用料は原作を掲載していた出版社(攻殻機動隊の場合は講談社)との調整がいろいろ大変でしょうが、パテント使用料はリアライズプロジェクトの方でかなり自由に運用可能なのではないかなと想像されます。(これが、前回の記事で書いた「攻殻機動隊ハッカソン成果の知財化がプロジェクト継続の資金源になる」と書いた理由)

体験展示だけではなく、一般販売される商品(例えばタチコマを家庭用ロボット等)の場合にも同じ構造(キャラクター使用料+パテント使用料)が成り立つわけで、おそらく最初のうちは体験展示、しばらくしたら商品でライセンス収入を稼いでプロジェクト運営に回すという展開なのかなと勝手に想像しております。

ここからは「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」の話を離れて、話題提供いただいた武藤さんの広告代理店時代の経験を元にした話。ここは、分科会オーガナイザーとして話題提供をお願いした際にはイメージしていなかったところで、自分も当日話を聞いて非常に面白いなと思ったところです。

エンタメと玩具(おもちゃ)の関係に特許を埋め込む

昔だとガンダムのプラモデル(ガンプラ)、最近だと(ゲーム原作ですが)妖怪ウォッチのように、エンタメ作品と関連のあるグッズ(おもちゃ、文房具など)の売上はバカにならないものです。というより、昔はグッズの販促としてアニメが放送されていたという一面もあります。

前項の体験展示でのパテント使用料の話にも繋がるのですが、玩具に特許を絡ませることで、キャラクター使用料とパテント使用料の両取りができます。言い方を変えるなら、グッズに特許を埋め込むために、新しい技術が必要な道具をエンタメ作品内に埋め込むということです。武藤さんが関わった事例でも、作中に出てくる道具を玩具化するために開発した技術が特許になり、この構造になっていたようです(どこまで意図的なのかは講演中では語っていなかった気がします。要するに、特許を絶対埋め込むという前提で先行技術調査まで行った上でコンテンツ製作に入ったのか等)。

市場を広げるとともに、市場が生み出した富の分配率を高める

昨今のビジネス系メディア等では「SNSやメディアミックスを活用していかに市場を広げるか」の話が多い気がしますが、今回の研究会で語られていたのは「市場が生み出す富からいかに多くを得るか」についての話でした。こっちの話って公の場で聞く機会が多くない気がしていて、とても参考になりました。まあ、関係者同士の密室会議で決まる話が多い中、特許という合法的な交渉手段を意図的に作ってどう活用するかという、凄く良い事例だったかなと思います。

ちなみに、広告代理店の武藤さんがコンテンツ制作事例を話しているということは、「原作者(出版社など)・広告代理店(武藤さんのポジション)・放送局(いわゆるテレビ局)」といった分配構造の中で原作の方にも踏み込んでいくということであり、こちらの面でも富の回収率を高める取り組みをしていました。

要するに、自分のところがしっかり回収できる仕組みを整えてからパイを広げに行きましょうということですね。市場を2倍に広げるのと、プロジェクト内での分配率を2倍に高めるのも同じ効果があるのなら、両方を視野に入れないともったいないでしょうということです。

以上、2回にわたって第1回の研究会の自分なりの振り返りをしてみました。次回以降の研究会もぜひ楽しみにしてください。